「特定行為をキャリアアップとして検討したいけど、実はそこまでよくわかっていない…」
なんて考えている人も多いのではないでしょうか?
特定行為研修とは、看護師が医師の直接指示を受けずに手順書を元に一部の医療行為を行えるようになるための研修で、「看護師としてのスキルアップ」や「キャリアアップ」に直結する重要な制度です。
近年、特定行為研修を修了した看護師の数が増加し、医療の効率化や患者への質の高いケアの提供が進んでいます。
この研修を受けると、看護師はより高度な医療処置を実践できるようになり、患者に寄り添ったケアの向上に繋がったり、現場での役割が広がります。
この記事では、「特定行為研修の内容」や「取得するメリット」、「受講のための条件」について詳しく解説します。
費用の負担を軽減するための支援制度についても触れているため、特定行為研修に興味がある看護師の方や、キャリアをより充実させたいと考えている方に役立つ情報が満載です。
特定行為研修がなぜ注目されているのか、またどのようにして自分のキャリアに活かすことができるのかを詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
私も実際に数年前に特定行為研修を修了しています。
特定行為研修・特定看護師とは?基本的な概要と必要性
特定行為研修とは、看護師が医師の直接指示を受けずに特定の医療行為を行うための研修制度で、患者の状態に応じてより高度な医療行為を提供することを可能にするものです。
通常、看護師の業務には医師の指示が必須ですが、特定行為研修を受けることで、一定の範囲内で自律的に判断して処置を行えるようになります。
厚生労働省のデータによると、2022年には全国で約5,000人以上の看護師が特定行為研修を修了し、その人数は年々増加傾向にあります。
ここでは、以下のポイントに沿って特定行為研修の概要について説明していきますね。
- 特定行為研修が看護師に求められる理由
- 特定行為を受講するメリットとキャリアの影響
- 特定行為研修を受けるための資格条件
具体的に見ていきましょう。
特定行為研修が看護師に求められる理由
日本の医療現場では、少子高齢化が進み、65歳以上の高齢者が人口の28%を超えるといわれています(内閣府「高齢社会白書」)。
高齢化に伴い医療ニーズが増加する一方で、医師不足や診療待機時間の問題が指摘されています。
こうした状況を受け、医師が行うべき行為の一部を看護師が担うことで、医療の質を保ちつつ効率化を図る取り組みが進められています。
特定行為研修の実施により、以下のようなメリットが期待されています。
- 医師の負担軽減:特に夜間や緊急時に看護師が対応することで、医師の負担を軽減
- 医療の効率化:特定行為を通じ、看護師が医師の補助を超えた役割を果たし、ケアを迅速に提供
- 地域医療の充実:医師が少ない地域や、訪問看護の分野で特定行為が可能な看護師が活躍
これらの理由から、特定行為研修は医療の質の向上などにおいて重要な要素となっています。
なりたい!という気持ちはもちろんだけど、自分が「なぜ」なりたいのか、期待される役割を整理して考えることが大切です。
特定行為研修を受講するメリットとキャリアの影響
特定行為研修を受講することで、看護師は通常の業務に加え専門的な処置が行えるようになり、キャリアアップが可能です。
厚生労働省の調査によると、特定行為研修を受けた看護師は、給与が約20%増加する例もあり、実際の収入にも反映されることが多いです。
また、職場での役割が増え、患者や同僚から信頼を得やすくなるため、職場内でのポジションが上がるとされています。
- 給与や待遇の向上:特定行為研修を受講した看護師は、キャリアの専門性が評価され、昇給や昇進が見込まれる
- 責任ある業務:独自の判断で処置を行えるため、医療現場での責任とやりがいが増す
- スキルアップ:高度な医療行為に携わることで看護師としてのスキルが向上し、キャリアの幅が広がる
キャリアアップを目指す看護師にとって、特定行為研修は大きなメリットがあると言えるでしょう。
一方で、実績がないうちは専門性の評価や給与・待遇の向上にはつながらず、実績を残したいけれど専門性の評価もされていないため活動もしづらい、というジレンマもありました。
私の場合は、手当や昇進も特にはなかったです。
その後の転職活動では、資格手当がしっかりつく施設も多かったので、施設によってはしっかりと評価されるなと感じました。
特定行為研修・特定看護師が習得できるスキルと実践内容
特定行為研修を通じて、看護師は医療現場で即戦力となる高度なスキルや知識を身につけることができます。
特定行為研修制度は「資格取得」を目的とするものではありません。
特定行為研修を受けることで、修了者には臨床推論力・病態判断力などが獲得され、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応を可能にすることなどが期待されています。
ここでは、以下のポイントに沿って特定行為研修で習得できるスキルと実践内容について説明していきますね。
- 特定行為研修が看護師に求められる理由
- 特定行為を受講するメリットとキャリアの影響
- 特定行為研修を受けるための資格条件
具体的に見ていきましょう。
看護師が行える特定行為の一覧と具体的な内容
特定行為は、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為が定められています。
特定行為研修を修了した看護師が行える主な処置には以下のようなものが挙げられます。
- 血糖値測定とインスリン投与:糖尿病患者の血糖管理を看護師が直接行える
- 創傷管理:デブリードマンやNPWTなどの創部のケアを定期的に実施
- 薬剤投与関連:脱水の補正、栄養剤の管理、利尿薬管理、カテコラミン管理など
これは本当にざっくりなので、行為の一覧が見たい場合は下記の厚生労働省HPから確認してみてください。
特定行為研修のカリキュラム内容と学べること
特定研修では、通学・e-ラーニング・実習など、さまざまな研修方法が組み合わされています。
基礎講義では臨床推論力・病態判断力に必要な基礎医学(解剖生理学・疾病論)や薬学、医療安全、臨床推論(フィジカルアセスメント含む)、医療安全、マネジメント理論など多岐にわたる講義を行います。
また、それに加え取得する特定行為区分に関連した専門的な授業(創傷管理であれば形成外科領域の医学的知識、栄養管理であれば栄養学/医師・栄養師どちらの視点にも近い講義)なども実施されます。
指定教育機関によって内容が異なることはありますが、その他は概ね下記のようなカリキュラムであることが多いです。
- 学内実習:学内で模擬患者を利用してアセスメント・特定行為技術を学ぶほか、グループディスカッションを通して事例検討を深める。
- OSCE:臨地実習前に模擬患者へ一連の特定行為(臨床判断から実践、その後の管理等も含む)の実践テスト。(判断や管理は口頭試問でした)
- 臨地実習:1行為あたり5症例の症例提出が必要。上級医師、指導医などからの承認を得た症例レポートを指定教育機関に提出します。
医学や薬学は講義はより専門的で難しいことも多かったです
特定行為研修を受ける方法と準備のポイント
特定行為研修を受けるためには、受講資格を満たした上で各地域や病院が提供するプログラムへの申し込みが必要です。
事前に申し込み手続きを確認し、研修に向けた学習を進めておくことが推奨されます。
ここでは下記のポイントに沿って解説していきますね。
- 特定行為研修受講前に必要な検討事項
- 特定行為研修の申し込み方法と流れ
- 特定行為研修に利用できるサポート制度
具体的に見ていきます。
特定行為研修受講前に必要な検討事項
特定行為研修制度は「資格取得」を目的とするものではなく、臨床推論力・病態判断力などを獲得することで、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応を可能にすることなどが期待されています。
今所属している施設の医療・看護の提供状況や、患者・利用者のニーズなどを踏まえ、研修を修了することで、どのようなことが実現できそうか組織と摺り合わせをしておくことがとても重要です。
研修を修了しただけで、「役割」や「成果」が自動的に生まれるわけではなく、実際にはコツコツ活動実績を積み重ねていくことが大切です。
活動の修了後に、施設・利用者・患者のニーズに合った活動を行うには、所属施設の関係者が、修了者がどう活動するかを共通認識して、体制整備をすること求められます。
事前に検討していた受講の目的や必要性を管理者に伝え、研修受講と修了後の活動について充分に相談をしたうえで、修了後の活動について準備の準備と受講のための準備も進めていきましょう。
- 所属施設の患者・利用者のニーズを整理する
- 特定行為を活かし、所属施設でどう活躍していくかを事前にすり合わせる
- 修了後の活動について必要な体制・制度づくりを組織と共に行う
私は組織の中でこれらが上手くできず、自分の力不足を実感して辛かったのを覚えています。
特定行為研修の申し込み方法と流れ
特定行為研修を受けるためには、受講資格を満たした上で、研修施設への申し込みが必要です。
受験資格やカリキュラムの内容は指定教育機関によって異なるため、自分が何の特定行為を受講したくて、どんな指定教育機関があって、実施要件を満たした施設はどこか、等も検討しておくことが重要です。
指定教育機関と実習要件を満たした施設が別の施設で、実習施設探しに苦慮するケースもよくあるので注意が必要です。
- 研修プログラムの選定:指定教育機関によって異なるプログラムが提供されてます
- 書類の提出:研修機関所定申込書や、勤務先からの推薦状が必要な場合が多いです
- 選考:教育機関によって異なりますが、願書や小論文による書類審査が多いイメージです
- 受講費用の支払い:受講料を確認し、手続きする
特定行為研修の費用とサポート制度について
特定行為研修の受講費用は、一般的に必須の区分別科目で45万円前後で、そのほかに選択する特定行為区分がある場合には、その受講料も追加されます。
実際の受講費用は指定教育機関によって異なるため、受験したい教育機関の募集要項を確認するとよいでしょう。
私は必修45万のほか、特定行為区分5行為6科目で合計100~120万程度だった記憶があります。
また、費用負担を軽減するための支援制度も多く存在します。
具体的には、以下のようなサポート制度が利用可能です。
- 自治体の助成金制度:看護師のキャリア支援として研修費用の一部を補助している自治体もあります。
- 職場の支援制度:病院によっては費用を全額または一部負担しているケースもあります。
- 奨学金制度:特に若手看護師向けの奨学金も利用可能
- 教育訓練給付制度や人材開発支援助成金:認可施設であれば利用できます
教育訓練給付制度や人材開発支援助成金についてはまた別途解説します
職場の支援制度は組織によってかなり違うので、長期的に資格取得に有利な施設に転職してから受講した同期もいました。
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特定行為研修を受ける看護師の口コミと体験談
特定行為研修を受けた看護師の多くは、「研修を通じてスキルアップを実感した」「現場での信頼が増した」といったポジティブな意見が多く見られます。
医療現場で即戦力となるスキルを身につけることで、自信を持って患者に対応できるようになったという声が特に多いです。
- 特定行為研修を受けた看護師の声と評価
- 特定行為研修で得られる実際のスキルと感想
- 特定行為研修を経てキャリアに変化を感じたエピソード
具体的に見ていきましょう。
特定行為研修を受けた看護師の声と評価
「血圧管理や経口薬の投与を自信を持って行えるようになった」「研修で学んだことが日々の業務に役立っている」といった評価が寄せられています。
また、実際の看護師の約80%が「研修で得たスキルは有益」と回答しています(厚生労働省調査)。
特定行為研修で得られる実際のスキルと感想
特定行為研修を受けた看護師は、血糖値管理や創部処置など、現場で役立つスキルを身につけています。
「特定行為を行うことで患者への対応がスムーズになり、医師からの信頼も得られた」という意見が多く、実践的なスキルを活かすことで医療の質向上に貢献しています。
特定行為研修を経てキャリアに変化を感じたエピソード
特定行為研修を受講した看護師の多くは、職場での役割や責任が増えたと感じています。
例えば、患者の治療管理や緊急時の処置を任される機会が増え、「医療チームの一員としてより積極的に関与できるようになった」との声もあり、研修のキャリアへの効果が大きいことがわかります。
体験談:実際に特定行為研修を修了して
私も数年前に特定行為研修の受講を修了しました。
詳しくは控えますが、パッケージ研修でいくつかの特定行為を修了しています。
実際に受講してみて感じたことを下記のポイントに沿ってまとめますね。
- 受講を決めるまで
- 特定行為研修受講中の過ごし方
- 特定行為研修終了後の活動
別途記事にするので、ここではザックリ解説します。
特定行為研修の受講を決めるまで
わたしが特定行為研修の受講を決めたきっかけは、自分のキャリア形成に悩んでいたタイミングと組織的なニーズが重なったから、という要因が大きいかもしれません。
結果的に、「自分が資格をもってどんな組織貢献がしたいのか」「組織的ニーズと現実的な活動プラン」という観点での洗い出しが不十分で、受講後の活動に苦慮したことを覚えています。
やはり、資格は受講して終了ではなくそれを活かしてどのように活動するか?が一番大事になります。
そしてそれを実現するためには、現場ニーズを洗い出し、理想とする目標に向けて組織と協働し、現実的に実現可能である範囲で実行を重ねていく必要があります。
自分のキャリアベースで考えると後々しんどいことも多いので(実体験)、自分の看護観・価値信念、患者ニーズ、組織的なメリット・組織ニーズ等多方面からよく検討することが重要だと考えています。
特定行為研修受講中の過ごし方
特定行為研修の基礎講義はオンラインであることが多かったので、基本的には自宅でZOOMを見るという形でした。
全国から様々な年代・キャリアの同期が集まり、看護について検討する時間はとても良い刺激になったことを覚えています。
このあたりは別途記事で詳しくまとめますが、勤務と並行しながらの受講はとても忙しく、正直あまり記憶がありません…。
試験や実習などはとにかく同期との情報交換が大事でした
特定行為研修終了後の活動
組織の中で特定行為活動者の活動実績がない場合、まずは活動する段階からとても大変です。
特定行為を実施するにあたり、手順書の作成、医療安全体制の整備(医療安全部門との連携)、同意書の作成や周知(そもそもどのように同意を得るか?包括同意にするか?等)、記録等電子カルテシステムをどのように使うか、院内横断的に活動するために自分の存在をどうアピールするか、などなど問題は山積みです。
そしてそれを起案し、上層部に掛け合い、承認を得たうえでさらに経営陣の承認を得る、などのスタッフナースではなかなか経験してこなかった管理的なSTEPもあります。
もちろん、特定行為を実施するにあたって医師やコメディカルの協力も不可欠です。
これらをいち看護師として実施していくことは、とても大変だったというのが私の率直な感想です。
特定行為研修とは?看護師の行為研修の内容とメリットまとめ
特定行為研修は、看護師が手順書の範囲で医師の直接指示なしで特定の医療行為を自律的に行えるようになるための研修です。
少子高齢化が進む日本において、医師不足や医療の効率化が求められる中、特定行為研修は看護師のスキルアップとキャリア向上に大きく貢献しています。
特定行為研修を受講し臨床推論力・病態判断力などを獲得することで、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応を可能することは今後の臨床看護にもかなり役立つと思っています。
この記事が、キャリアに迷っている方の参考になると嬉しいです。